つなぐマガジン vol.09_out

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今こそ考えたいコミュニティづくり「おたがいさま」の気持ちが息づくこの国で現代の人間関係について語るとき、その希薄さがよく指摘されます。しかし、かつての日本では、同じコミュニティに属する人々は強く結束し....

今こそ考えたいコミュニティづくり「おたがいさま」の気持ちが息づくこの国で現代の人間関係について語るとき、その希薄さがよく指摘されます。しかし、かつての日本では、同じコミュニティに属する人々は強く結束していました。そして今、そのような人と人とのつながりを呼び起こそうとする気運が高まっています。昔から日本に根付いている「おたがいさま」の心〝ひとり?ではできないことを地域の〝みんな?でやる││日本では古くから、それが当たり前のように行われてきた。たとえば田植えや稲刈り、茅葺き屋根の葺き替え、冠婚葬祭。「おたがいさま」と言いながら大勢で手を貸し借りしあうことで、それぞれの生活が円滑に回るようにする。ひとつの「ムラ」、つまり地縁を結んでいる共同体こそが「コミュニティ」であり、そのコミュニティが円満に機能することが、一人ひとりの生活の幸福につながると考えられていたのである。「祭り」もまた、地縁にもとづく共同作業の好例といえるだろう。祭りは、はるか昔からコミュニティを強固なものにする行事として各地で行われている。祭りに込められた想いは、五穀豊穣、無病息災、商売繁盛、つまりは共に暮らす人々の平穏や繁栄。だからこそ祭りとなると、地域が一丸となり、たくさんの人が協力しあう。どんな祭りも一朝一夕にできるものではなく、長きにわたる伝統のもとに成り立っている。そこで、祭りでは横のつながりだけでなく、縦のつながりも大切にされてきた。祭りをきっかけに、子どもたちはコミュニティの一員に迎えられることが多かった。子どもにとって、祭りはコミュニティに伝わる芸能や習慣、人づきあいを学ぶための場であった。そして祭り当日には、地域のみんなで同じ時間を過ごす。共に神事を行い、集って宴を囲む。祭りは、地続きの場所で共生している者同士がそれを改めて確認し、さらに絆を深めあう場。祭りで深められた絆は、日常に活かされていたのである。コミュニティ再考の気運が高まっている現代において、同じ敷地に多くの人が暮らしているマンションは、地縁を結ぶひとつのコミュニティだと考えられている。ただ、時代の変化とともに人々の暮らしは豊かになり、家庭ごとにライフスタイルは多様化している。かつてほど、横のつながりあいが必須ではなくなっているともいえるだろう。しかし、東日本大震災の際、「おたがいさま」と声をかけあうことで安心し、大切な情報を得られたという方は多いはず。人は誰の手も借りずに、ひとりきりで生きていくことはできない。万一の際、自分は外出し、子どもしか家にいない状況を想像して、不安に思ってはいないだろうか?東日本大震災をきっかけにして、地域住民の相互扶助や、横のつながりを意識する人は確実に増えている。かつて、コミュニティを大切にする風土があったこの国で、今再びその想いが呼び起こされている。とはいえ、同じマンション内の隣近所に暮らしているから、必ず親密でなければいけない、ということはない。また、ご近所づきあいを深めなくてはと、つねに身構える必要もない。普段の挨拶も立派なコミュニケーションのひとつなのだから。お互いにちょっとしたお願いごとができるようになったり、万一の際に助けあえたりする関係も、まずは、「こんにちは」のひとことから始まるのである。人々の「手を取りあいたい」、「互いに助けあいたい」という想いが高まっている今こそ、コミュニティづくりについて改めて考えてみたい。introduction